2019年3月

2018年度  私の一冊

 

            たけはら読書会

 

芳名

書名

著者・編

発行所

発行年

講師

吉川五百枝

先生

 

 

神峰山(かみのみねやま)

穂髙 健一

未知谷

2018

竹原の海岸から先ず目にする高い山は、大崎上島の「かんのみね」(神峰山)。その頂上付近に数多の地蔵像がある。無縁仏だそうだ。戦後、木江港に出入りする船員を相手にした女性達(女郎)の五つの物語を編んで、戦争は終戦宣言だけで終わらないと見せつける。

<C>

猫を抱いて象と泳ぐ

小川洋子

文藝春秋

2011

【「BOOK」データベースを編集】 「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。

YA>

 

檻の中のライオン

楾 大樹

かもがわ出版

2016

立憲主義の大切さを訴える。この本の中では檻は憲法、ライオンは国家権力。基本は憲法は国家をしばり、国民を守るに尽きる。現在の日本の政治は反対の状況の様子のみみえ、国家権力が横行し過ぎていて恐怖を感じる時がある。

<M子>

お薦めの本

『科学の扉をノックする』

小川洋子

集英社

2008

『無国籍の日本人』

井戸まさえ

集英社

2018

さいごまで「自分らしく」あるために  ホスピスの現場から

山崎 章郎 他3名

春秋社

2018

細川ガラシャ夫人

三浦綾子

新潮社

1986

ユダヤ人を救った動物園

ダイアン・アッカーマン

亜紀書房

2017

広島藩の志士

二十歳の英雄 高間省三物語

穂高健一

南々社

2018

極夜行

角幡唯介

文藝春秋

2018

 

<TK>

 

断捨離で日々是ごきげんに生

きる知恵

やましたひでこ

アスコム

2010

生まれてからの環境により、潜在意識ができている。色々な執着から、今と自分の軸からずれて片付けられなくなる。自 分の意識を考え直させられて嬉しかった。

<R子>

日々是好日

森下典子

飛鳥新社

2002

【BOOKデータベースを編集】 お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる…季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

 

<KT>

 

こども「折々のうた」100

大岡 信   

長谷川 櫂 監修

小学館

2019

大岡 信氏が朝日新聞一面に書かれた詩歌のコラムから、詩歌と俳句を50ずつ選ばれたものです。10歳からよみたい詩歌ということで理解しやすく興味あるものから読めてて楽しい。

<E子>

 

泣いた赤鬼

浜田廣介

 

 

【「BOOKデータベース」から】 人間と友達になりたい、心のやさしい赤鬼。でも、なかなかうまくいきません。すると、なかまの青鬼にがやってきて、赤鬼にある提案をしますが……。発表から80年たった今も愛され続ける心やさしい鬼たちの友情を描いた、不朽の名作。

<T>

バカの壁

養老孟司

新潮社

2003

相手を理解できないのは、お互いにバカの壁(知りたくないことは 意識的に情報を遮断すること、相手を理解しようとしない)を作っているからだと考え、お互いが歩みより理解し合うには、「人間であればこうだろう」という常識によって 壁を乗り越えていくしか道はないと作者は述べている。自分にあてはめて納得できることも多かったが、人生とは、個性とは…について書かれていて若い世代(10代・20代)の人が読むとよりよい内容だと思った。

 

<N2>

枕草子(桃尻語訳)上・中・下

橋本 治

河出書房新社

1998

著者 橋本治によって古典文学が身近になる作品の一つです。私にとって読み難い古典が、なんと理解し易く、好きになってしまうことか……。皆さんにお勧めです。特に若い方々にお勧めです。

<K子>

 

河北新報のいちばん長い日

河北新報社

文藝春秋

2011

事実を淡々と述べているのに、どうしてこんなにも心をしめつけられるのかと思いました。現実にあったことなのです。今一度東北の人々の苦しみを身近に考えてみたいと思いました。河北新報社のあり方にも感動しました。

<Y>

 

異邦人(いりびと)

浜田マハ

PHP研究所

2015

【「BOOKデータベース」を編集】 有吉美術館の副館長・菜穂は、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。その絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」

<SM>

 

明恵上人

白洲正子

新潮社

1999

鎌倉時代、栂尾高山寺で修行を重ねた明恵上人。時世を憂うるより釈迦の理想を実現することに専念した。「人は阿留辺畿夜宇和(あるべきやうわ)」と云七文字を保つべきなり」は、明恵が自らの在りようを問い続け、実践し続けた思想である。高僧と尊い言葉にご縁をいただき、深く感謝。

<MM>

ばっちゃん ~子どもたちの居場所 広島のマザー・テレサ~

伊集院 要

中本 忠子

扶桑社

2017

ばっちゃんと慕われている中本忠子さんを取材した本です。中本さんの活動は実行するのは難しいよとよく言われますが、彼女は実にシンプルに言い切っています。「腹が太っとれば悪いことはせん。行くとこがない子供らに助けてと言われたら やらにゃおらんと思うよ。」

 

  

◆◆◆ 【N2】

今月は年度末で各自のお勧めの本ということでした。

その中で、白洲正子著『明恵上人』の「阿留辺幾夜宇和」について「あるべきようわ」と「あ

るべきようは」が「和わ」、は「者、波、盤、八、葉、、、、、は」waとfaで同じと思えない気がしたのですが、後日調べたところやはり万葉仮名には意味を探っても意味がなく私の深読みのようでした。他にも調べてくださった方がいらして同じ意見でした。このように違った意見を述べても懐深く受け止めてくださるこの読書会にますます魅力を感じて今年度を締めくくりました。 

 

 

◆◆◆ 【MM】 『ばっちゃん~子どもたちの居場所。広島のマザー・テレサ』

 

  2018年の私の1冊は、NHKディレクター伊集院要著『ばっちゃん~子どもたちの居場所。広島のマザー・

 

レサ』である。先月の『河北新報のいちばん長い日』で書かれた「伝える立場なのに伝えていいものか迷う、

 

伝えることは確かに大切だし必要なのだが、周りを見てそれが本当にいま一番することなのか、場合によって

 

は伝えない選択もあるのだ」と感じたことが心に残っていて、この『ばっちゃん』にも同じことがえがかれていた

 

ので選んだ。

 

 『ばっちゃん』は保護司(現在は年齢制限があるため引退)をしながら、自宅を開放しておなかを空かせた子供たちに、手料理をふるまっている中本忠子さんを取り上げたドキュメンタリー本である。テレビ番組のために何年もかけて中本さんを追っている間にはいろんなことが起こった。それをテレビで流せば視聴者の興味をひき、「おいしい」展開になることが起こるわけだが、ディレクターの著者は最初はなんとかして撮ろうと思ってはいても中本さんの言葉には出さない行動に自らの行動を問う、そして撮らないという選択もした。『ばっちゃん』と『河北新報のいちばん長い日』のもうひとつの共通点は相手の立場に立つ、自分以外の視点を持つ、ということだとも感じた。

 

 

 中本忠子さんを取り上げた本をほかにも読んだ。『あんた、ご飯食うたん? 子どもの心を開く大人の向き合

 

方』、『ちゃんと食べとる?』、この2冊は中本忠子さんの著書である。中本さんと同じことをしようと思ったら

 

大変なことに感じるが、中本さん本人は著書のなかでも言っている通り、やっていることはシンプルなことなの

 

だという。

 

 「おなかがすいてなかったら悪いことはせん」「どこにも行き場のない子どもらから『助けて』言われたらせんに

 

おれんよ」。難しくなくわかりやすい言葉だからこそ響いてくるものがあった。