2019年10月                           

 

課題本『神峰山』穂高健一/著 未知谷

 

 

 

課題本が生み出された背景を探りたくて、大崎上島フィールドワークを実施しました。

大崎上島が置かれた地理的な背景、繁栄をもたらせた時代的な背景の中で、精一杯生きた人々の生き様の一端を識り、感じることができました。

 

読書会の皆様と有意義な時間を過ごさせていただきました。 (庶務係)

 

 

 

 課題本『神峰山』 感想 

 

 

◆◆◆ 【C】

 

 数年暮らした、懐かしい大崎上島。今は離れてしまったが、蜜柑の花の香りとともに、あの美しい島々の景色と、夕日の沈む美しい瀬戸内の海を思い出すことがある。木江の花火、櫂伝馬、みかん山、商船学校……・。

 

おちょろ舟や紫雲丸のことは知っていたが、神峰山のお地蔵様にそんなエピソードがあったことは知らなかった。エピソードの一つ一つに、地名が出てくるので、その場所を思い浮かべながら読み進むことになる。読み終わると、悲しみだけが、余韻に残った。

 

ああ、あの島の静けさは、こんな悲しみを含んでいたのか、と妙に納得する感じもした。昭和20年代の女郎屋の空気感を知る著者だからこそ、書けた作品だろう。島には高齢者が多く住んでいる。似たようなエピソードを知っていて、心に秘めている人もいるだろう。島だけでなく、戦後の日本は、こんな哀しいエピソードがたくさんあって、珍しい話ではなかったのだろう。しかしそれを語る人はいなくなっていく。島に住み始めた頃、お年寄りから、原爆が落ちた時のことを日常会話の中で聞いたことがある。実際に経験した人からの話は、その知識があっても、本当に衝撃を受けた。生々しい現実のこととして肌で感じる話だった。<戦争は終戦、敗戦という言葉だけでは終わらない>という著者の言葉が重い。

 

 

 

 

 

 課題本『神峰山』 フィールドワーク感想

 

 

◆◆◆ 【N2】

 

 高御座に居られる新天皇を映像で拝見しながらこの作品を読み返しましたが、画面の流れる現代と作中の時代との違いに驚きを感じました。

 

 翌日の大崎上島町木江、神峰山のフィールドワークは天気に恵まれ秋の清々しい空気の中、瀬戸内海の穏やかな海に遠く四国の島も見え大成功でした。

 

 本作品を読んで神峰山にある沢山のお地蔵様の疑問が解けました。戦後のどん底の経済のなか混乱の中を過ごした女達、少女達、男達のあえて口に上ることもない事実、

 

昭和20年代に瀬戸内にまだ遊郭街があったということ、それはまだ遠い昔の話ではなく、

 

つい70数年ほど前のことでしかないということに驚きます。この作品はフィクションですが、

 

戦後を生き抜かなければならない庶民の悲しみ苦しみを読むと「終戦」という言葉だけで

 

戦争は終わるものではないとつくづく思います。

 

 

 

◆◆◆ 【MM】

 

 私は竹原へ嫁いできて18年になる。フィールドワークのための課題本『神峰山』を読むまではおちょろ舟や女郎屋の話などまったく聞いたことがなかった。造船で栄えた町とそこに集まる人々の話であった。悲しい話が多かった。

 

 男と女の話なのかなと興味が先に立って読み進めた。貧しい農家から身売りされた娘や戦争で人生が狂ってしまった女性の話、また女郎の子供の話……。職業による差別もある中で流されながらも生きようとする人もいれば、自ら命を絶った人もいる。小説の体はとっているが実際にあった事件や事柄もはさまれているので、ひきこまれて一気に読んだ。

 

 一番心を動かされたのは紫雲丸の話だ。日にちの変更があり紫雲丸に乗った修学旅行の小学生など160名を超える犠牲者を出した衝突事故。家族に買ったおみやげが濡れないように、大切だからと船内に戻った生徒もいるという。お互いを大切に想う小学生カップルの二人の話や残された家族のことに涙を流した。紫雲丸という言葉は聞いたことがあったがこういうことだったのか……。今回初めて紫雲丸についてもう少し知りたいという気持ちになった。

 

 『神峰山』を読んでからのフィールドワーク。

 

 フィールドワークを通して感じたことは、本にあったようなことは一部の話を切り取ってズームアップしたものであり、そこまで悲観的ではなかったこと。悲しいこともあったとは思うが、それ以上に生活に根付いていたのではないか、という印象を受けた。資料館で聞いた話によれば、女郎は一夜妻と呼ばれ仕事は掃除、洗濯、料理など生活の一般的な家事も含まれていた。よそから身売りされて働いていた人もいるが地元でも資金を得るために働いていた人もいる。小説を読んで驚いたこともあるということ。

 

 現地で話を聞かなければわからなかったことにも触れられてよかった。参加者の中には島内の人もいて補足説明もあり得るものが多かった。本を読んでそれに関する現地学習。今回の読書会も実り多い回でした。外でにぎやかに集まるのもまたいいものですね。

 

 

 

大崎上島町木江出身の作家 穂高健一著

『神峰山』の世界に いざなわれて

 

 期 日 20191023日(水曜日) 823日下見済み

2 行き先 大崎上島町 神峰山

3 参加者 竹原読書会(10名)&Sさん

4 ねらい 神峰山のお地蔵様参り等を通して『神峰山』の世界を堪能する

5 行 程

  925分 竹原港発

  ■9時50分 垂水港着後 出発

  1020分 ①高野山金剛寺着                

             ご住職に山門で「お地蔵様」の話を聴く

  ■1050    昼食

          『神峰山』感想交流

  12時00分 ②木江ふれあい郷土資料館見学  

            おちょろ舟・お地蔵様の話                                     

  1245分 ③神峰山へ出発 木江側から車で

  1430分 ④神峰山 下山

          ⑤車窓から, 木江の古い町並みを見学

          (天満区木造建築群,病院,天満港,厳島神社,五階建て木造建築,一貫目港)

 1530分 垂水港発

    1555分 竹原港着